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velocity *blog : ゲーム制作集団「べろシティ」の開発日誌的なカンジです。

Δです。今年も残すところわずかとなって参りました。

冬コミ直前、毎度好評の心のこもったレビューです。
リアルで煙たがられつつも、彼らの発表する同人誌の
素晴らしさをお伝えしていきたいと思います。

未定/Diabolique Symphony(3日目 ケ-27b)
かつてモーツァルトは「尊貴な学位も想像力も、その両方を足したものも、
天才の誕生には至らない。愛、愛、愛。それこそが天才の神髄なんだ」
と語った。この本を目にして、私は真っ先にその言葉を思い出した。
同人誌全体からにじみ出てくるのはまさに愛、愛、愛。

断言しよう。佐神原左京はとてつもない包容力を感じさせる一作を
同人の荒野に放った。きっと彼が荒野にまいた種は乾いた土に根を張り、
茎を伸ばし、美しい花を咲かせることだろう。

佐神原左京。その非凡な同人作家の名を知らないものはもういないだろう。
前作『LEVITATION』で見せた大胆なアングルのイラストは、同人界隈では
すでに左京スタイルと呼ばれ一つのモードとして確立されている。

「コミケット74は佐神原左京一人のためだけに開かれた。」
私の知人のある大物同人作家はそう呟いた。それほどまでに
衝撃的だったのだ。大御所と呼ばれる大物同人作家たちの多くも、
20代の若者があれほどまでの完成度をもつ作品を世に送り出したことに
舌を巻いたそうである。

さてその『LEVITATION』より時を待たずに放たれる今作。
タイトル、価格ともに未定であり、アイドルマスター関連の同人誌であるこ
としか発表されていない。驚くべきことに、コミケ当日まで一週間を切った
現時点でもそうなのだ。

この大胆不敵さは左京のもつ絶対的な自信に裏打ちされている。
アイドルマスターそのものの魅力をよく吟味した末に、氏は
「千早、あずさ、律子という普段あまり日の目を見ることのない
キャラクターたちこそがアイマスのアルファとオメガだ」と言い切った。
その発言の真意とは何か。

オーケー、ご託はもういい。答えはすべて、12月30日に明かされる。



@ Is For Idle/in this(3日目 ケ-27a) 100円
同人全土を巻き込んだ竜虎の争いである。剛の左京に対して、柔のちゅ。
伏竜の左京に対して、鳳雛のちゅ。両者のどちらがより優れているのかは
神のみぞ知る、だ。

90年代初頭、商業主義に染まり疲弊したロックシーンを『Nevermind』
という一作が打ち砕いた。発表したのはNirvanaと名乗るシアトル出身の
三人組の若者だった。それと同じことが2009年、同人シーンで
繰り返されるのかもしれない。他をあざ笑うかのようなずば抜けた
インテリジェンスを感じさせる、ちゅと名乗る若者の渾身の力作によって。

作品タイトル『@ Is For Idle』を直訳すると『アはアイマスのア』となる。
おそらくレイ・ブラッドベリの小説、『ウは宇宙船のウ』になぞられた
のだろう。私は萩尾望都がマンガ化したものしか読んでいないが、
その作品世界にはやはり宇宙空間を想起させるような静けさ、
スケールの大きさがあった。

なるほど、その点でいえば、これは本作のタイトルとしてふさわしい。

たしかにこの本は宇宙船だ。これはイラスト集ではない。
ただ鑑賞してポイ捨てされるような絵ではない。この本は乗り物だ。
読者を宇宙へ連れて行くための乗り物だ。

全12ページからなる本作は、アイドルマスターのキャラクターたちの
イラストで埋め尽くされている。そのすべてが精巧なカラーイラストだが、
これが彼の自宅で手作業でつくられたというから驚きだ。

前作『しろくろ』もそうだったが、氏の描くイラストにはどこか冷めた
印象がある。計算され尽くしたレイアウトからだろうか。いずれにしても、
本作もアイドルマスターという世界観に浸りきるのでなく、アイマス現象を
メタレベルから見下ろすような冷徹な雰囲気を否応なく感じとってしまう。
巷の噂では、「このクールさがたまらない」と若い女性読者を増やしている
らしいがそれはまた別の話。

そんなクールな氏ではあるが、キャラクターの選別にはやはりこだわりが
あるらしい。筆者が亜美真美が一番好きだといったとき、氏は「伊織、雪歩
以外のキャラクターは本質的には不要なんだよね」とつぶやいた。
レトリックを使い分ける氏のことだから、この発言を文字通りに受け取る
など論外である。ではこの発言の真意は何か。

百聞は一見に如かず。12月30日に、あなた自身で答えを見つけてほしい。


そうだ、わすれてた。冬コミ3日目は左京らのスペースをのぞきにいってちょっとだけ
売り子をしていたりすると思います。ぶっちゃけ2日目に参加できないせいでその
代わりに3日目の午後4時に拍手して帰りたいと思ってるからなんですが。
冬コミ3日目終了時の夕焼けを見たときの侘しさは格別です。

BGM: じゃがたら「暗黒大陸じゃがたら」
(もう何十回も聴いた名盤ですが、この文章を書いてるとき気分が昂揚してきてついリピートしちゃった)
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